部屋に入った時の第一印象からすると、天井が高いのを気持良く感じる場合が多いことは確かだ。しかしそれも場合によりけりで、広さのわりに天井が高すぎる部屋は、しばらくとどまっていると、井戸の底にいるようで何とかく落ち着かない気分になるものだ。ぼくが新婚旅行の時ローマで泊まったブラザホテルの客室がそうであった。このホテルはかなり古い建物であるせいか、つくりがすべてゆったりしていて、客室の天井高は3メートル50センチぐらいあった。
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これは近代的なホテルのコンパクトな空間に慣れた目には実に贅沢な感じで、最初は感激したのだが、2、3泊しているうちに、その高さかかえって気づまりになってきた。観光に疲れてホテルの自室に帰るとホッとするものだが、そういう時に、この部屋の高い天井は夫婦のさり気ない会話の声を虚ろに響かせるので、なにか佗しい感じになったのだ。