居間に置いてあった安楽椅子を修理に出したら、このところどうも落ち着けない。これは誰それのデザインというような逸品ではなく、無名のメーカーの製作によるごくオーソドックスなのハイバック・チェアにすぎないのだが、独身時代から長年愛用してきたためにぼくの身体にすっかり馴染んでいたものだ。わが家の居間ではこれがぼくの指定席ということになっていて、夕食の後などにここに腰を据え、付属のオットマンに足を乗せてぼんやりパイプをくゆらせたりしていると実に快適にくつろげるのだが、その椅子が一時的にでも欠けたとなると、自分の居場所がなくなったような気分になってしまうのだ。
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わが家ではこの椅子を「お父さんのグルグル椅子」と呼ぶ。この呼び名は、二人の息子たちがずっと小さかった頃に、彼らを代わるがわるにこの椅子に乗せ、目が回るほど激しくグルグル回してやるとキャッキャッと笑って喜んだことに由来する。そういう乱暴な使い方が今になってたたってきたのか、先日、回転機構の金物がパックリロを開き、中からパチンコの玉のようなボールベアリングが転がり出て来たので修理に出すことになったのだ。